精子がいないけど子供が欲しい

~非閉塞性無精子症と戦う夫婦の記録~

■16. 採卵手術と採卵結果

2018年9月
 
採卵の日を迎えた。
採卵日がちょうど土曜日に当たったので、会社を休まずに済んだ。
 
事前の診察で、左右の卵巣に計10個の卵胞があるという事がわかっていた。
10個も採れたら凍結料金がまたかかるな、と凍結料金の計算をしながらクリニックに向かった。
 
クリニックの受付で、自分の名前が書かれたバングルを腕につけてもらう。
無機質なバングルには、カラフルなペンでコウノトリや花や蝶のイラストが描かれていた。
きっと、クリニックの人が描いてくれたのだろう。
 
わたしの他にも3人程採卵をする人がいるようだった。
順番に名前を呼ばれ、手術着に着替えて、カーテンで仕切られたベッドに横になり点滴を打つ。
 
一人目の採卵が終わり、わたしの番がきた。
手術室に入り、手術前の挨拶を聞き、手術台に横になる。
局部麻酔か静脈麻酔を選べるのだが、局部麻酔を選んでいた。
「麻酔チクッとしますよー」
と言われたが、どれが麻酔なのかはよく分からない。
 
それから、採卵用の器具を入れる。
モニターで卵胞に針が刺ささり、ゆっくり卵胞がしぼんでいくのが見えた。
 
採卵自体は、痛みは0ではなかったが耐えられるレベルだった。
全て終わり、最後に止血と消毒をしてくれたのだが、採卵よりそっちの方が痛い。
 
止血後、歩いてベッドに向かい、1時間程度横になっているように指示をうけた。
生理痛のような鈍痛があったが、長年これに似た痛みと戦っているせいか落ち着いていた。
 
 
採卵後の痛みは、クリニックで30分程横になっているうちに回復した。
その後、カウンセリングコーナーに移動。
そして、明るい口調で看護師さんが喋り始めた。
 
「今回の採卵で採れた卵子は5個です。」
 
 
えっ?
5個?
5個なの?10個もあったのに???
ショックで、なぜ減ってしまったのかは聞けなかった。
 
「5個の卵子の中で、成熟した卵だけを受精させ、培養して分割させていきます。」
 
「明日、何個受精できたか電話で確認してくださいね」
 
「受精が出来てたら、移植しますから4日にきてくださいね」
 
ここから、更に減る可能性があるって事??
そう考えると急激に不安が押し寄せてくる。
 
帰宅してすぐに、採卵から分割までをネットで調べた。
 
まず、卵胞10個に対して5個しか採れなかった原因について。
 
考えられるものとして、
成熟が足りず、卵子が卵胞の壁についたままになっていた。
年齢などの理由により、空胞だった。
などが上げられるようだ。
 
そして、取れた卵子の中で成熟したものだけが顕微受精にかけられる。
さらに、受精後に培養して分割させていくのだが
4分割→8分割→桑実胚→胚盤胞と5、6日かけて一部の受精卵だけが胚盤胞と呼ばれるところまでたどり着くのだ。
 
新鮮胚移植は、分割時点での移植。
凍結胚移植は、胚盤胞での凍結が一般的なようだ。
胚盤胞になる確率はよく分からなかった。
見かけたサイトでは50%とも書かれていたが、一つも胚盤胞にならない事も珍しくないように思えた。
況してや、うちは状態のいい精子ではない。
わたしもそこまでもう若いとも言い切れない。
 
無知のあまり、採卵したら後はちょちょいと受精させて、着床・妊娠するかどうかの確率と戦っていくだけだと思っていた浅はかな自分。
受精卵を分割ないしは、胚盤胞まで育てるまでもこんな険しい道のりがあるなんて…。
 
採卵前、受精卵10個の凍結金額を計算してたのが恥ずかしい。
現在5個に減ってしまった卵子が更に減っていくことを考えると、凍結自体が奇跡に思えた。
 
 

→■17. 受精結果

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